収支計算を行った際に、想定していた損益額と大きく異なる場合、計算方法の違いが原因となることがあります。
この記事では、移動平均法と総平均法の違いとメリット・デメリットについて解説していきます。
移動平均法と総平均法とは
暗号資産の収支計算には、移動平均法と総平均法と2つの計算方法があり、それぞれ以下のように定義されます。
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移動平均法:取引のたびに現在の取引価格と保有数から平均取得原価を出し、この取得原価をもとにして収益を計算する方法
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総平均法:特定の期間内に取引した通貨の平均単価を取得原価とし、この取得原価をもとにして収益を計算する方法
計算方法の選択
現物取引の場合、基本的に下記で行う形になります。
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個人の方:原則、総平均法を選択 (※国税庁へ届出手続きを行う場合には移動平均法が適用できる)
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法人の方:基本的に移動平均法
*注意:年によって総平均、移動平均での計算を選ぶことはできず、一度決めたらその計算方法を毎年続けるということが基本になります。
メリットデメリット
それぞれの計算方法によるメリット・デメリットは以下に挙げられます。
計算方法 | メリット | デメリット |
移動平均法 |
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総平均法 |
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2つの計算方法の比較
例えば2023年度のサンプル明細を使用してそれぞれの計算方法で計算してみます。
移動平均法で計算した場合
日付 |
購入 |
売却 |
価格(円) |
損益(円) |
2023/1/1 |
1BTC |
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2,200,000 |
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2023/2/1 |
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1BTC |
3,000,000 |
800,000 |
2023/3/10 |
1BTC |
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2,700,000 |
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2023/4/1 |
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1BTC |
3,000,000 |
300,000 |
2023/11/10 |
1BTC |
|
5,600,000 |
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移動平均法では取引のたびに現在の取引価格と保有数から平均取得原価を出し、この取得原価をもとにして収益を計算するので
損益は、800,000 + 300,000 = 1,100,000円 の利益
となります。
総平均法で計算した場合
日付 |
購入 |
売却 |
価格(円) |
購入累計(円) |
売却累計(円) |
2023/1/1 |
1BTC |
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2,200,000 |
2,200,000 |
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2023/2/1 |
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1BTC |
3,000,000 |
|
3,000,000 |
2023/3/10 |
1BTC |
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2,700,000 |
4,900,000 |
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2023/4/1 |
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1BTC |
3,000,000 |
|
6,000,000 |
2023/11/10 |
1BTC |
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5,600,000 |
10,500,000 |
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総平均法の場合、収支=総売却額ー(平均取得単価×売却数量)となるため、
平均取得単価 : 10,500,000円 ÷ 3BTC = 3,500,000円
6,000,000円 - ( 3,500,000円 × 2BTC ) = ▲1,000,000円
となり、損益は-1,000,000円の損が発生となります。
計算結果の違いについて
上で紹介したように、計算方法の違いにより計算結果に大きな違いが発生します。
同じ取引でも損がでるなら総平均法の方がいいんじゃないかと思われるかもしれませんが、ここで注意してほしいのが、その年が終わった後の翌年に繰り越したBTCの取得原価になります。
移動平均法の場合には、最後に購入した
2023/11/10 1BTC 5,600,000円
がそのまま繰り越しの情報になるため、
1BTCの取得原価が5,600,000円となります。
総平均法の場合には、上の計算で出した、
平均取得単価の3,500,000円が取得原価になります。
1BTCの取得原価が3,500,000円となります。
このBTCを2024年に5,000,000円で売却を行った場合、
移動平均法の場合には
5,000,000円 - 5,600,000円 = ▲600,000円 の損が発生
※2023年の損益1,100,000円と合計すると
1,100,000円 - 600,000円 = 500,000円 の利益
総平均法の場合には
5,000,000円 - 3,500,000円 = 1,500,000円 の利益が発生
※2023年の損益▲1,000,000円と合計すると
▲1,000,000円 + 1,500,000円 = 500,000円 の利益
となり、移動平均法と総平均法での計算結果は同じ損益となります。
1年単位では損益額の異なる移動平均法と総平均法ですが、どちらを選択しても最終的には損益は同額になりますので、複数年単位でみるとどちらが有利かということはございません。